MAJOR LEAGUE BASEBALL
FEATURING KEN GRIFFY JR
パワプロ度
★★★★★
リアル度
★★★★★★
 トレー度
★★★★★★
私は野球が好きだ。そしてゲームも好きだ。そのためこの2つが組み合わさった「野球ゲーム」というものは非常に好きだ。1日に10試合ぐらいやる事も可能。ベストプレープロ野球では1年間に3シーズンを送り、パワプロは1ヶ月で135試合消化した・・・それだけやり込んでくると段々要求するものが高くなっていく。
 現在、野球ゲームで最高峰なのはN64版のパワプロであろう。しかし、このゲームにも楽しんでいるものの不満は多々にある。流し打ちが難しい。一塁線・三塁線を抜けるヒットが無い。アベレージヒッターよりもパワーヒッターの方が強い。ピッチャーのコントロールのパラメータの再現が薄い。暴投の扱いがよくない。サイドスローの角度が再現されていない。ゲームに対する不満はざっとこの程度だ。
根本的な面では投球システムにも不満はある。変化球が全てフォークなのだ。それは例えば、カーブというのはふわっとボールが飛んできて、斜め方向に沈んでいく球だ。しかし、パワプロでは遅い球速で真っ直ぐ飛んできて、手元で斜め下にカクッと落ちる。まさにフォークなのだ。シュートなども手元で内側にクイッと曲がるが、実際にはピッチャーの手元を離れた瞬間から打者の方に食い込んでくる球だ。一番ひどいのはチェンジアップ。曲がりの悪いフォークと化している。  つまり、パワプロの投球システムは初めて具体的に変化球を表現したゲームであり、だからこそ評価を受け、そして私もプレイしている。しかし、この投球システムには角度及び緩急というものがまったく表現されていない。フォーク・カーブ・スライダー・シュート・シンカーしか変化球の無かったスーファミではそれでも良かったかもしれない。しかし、現在は落ちる球だけでもフォーク・チェンジアップ・ナックル・SFF・Vスライダー・パームとあり、その軌道はすべて「手元で真下に落ちる」である。変化量やスピードなどで調節しているのだが当然フォークが一番強く、チェンジアップを武器にするピッチャー・ガルベスがパワプロではかなり弱い。また、本来のスライダーの軌道はこのゲームにおけるカーブに近いため、例えばスライダーを武器にする石井一はスライダーではなく、カーブを持っていたりする。また、スライダーしか持っていない赤堀がそのままでは相当弱いため投げられない球を数多く持っている。
 無論、ゲームを楽しもうという考えから言えば気にする事ではないのかもしれない。しかし、究極を求めるユーザーは飽き足らない。そして私がもっとも欲するのはトレードである。
トレードが必要とするのは、監督気分を味わう上ではトレードによるチーム改造がもっとも高く、また何度もシーズンをプレイする上ではマンネリを防ぐと言う上では非常に大きい。特に「野球チームもつくろう!」ではその面白さをたっぷりと味わう事が出来た。
 しかし、最も面白い野球ゲームはパワプロなのである。そしてそのパワプロにはトレードが無い。私には悶々とする日々が続いた。
 
そんなある日、アメリカのゲームであるが、非常によく出来たトレードシステムのある野球ゲームがあると聞いた。それがこの作品、「MAJOR LEAGUE BASEBALL FEATURING KEN GRIFFY JR」(以下グリフィーJR)である。アメゲーということで多少はいぶかしんだが、発売が任天堂と言う事も有り購入を決意、秋葉のショップで変換アダプターと共に購入した。
 
まさに素晴らしいトレードシステムだった。相手側が要求する基準は高い。低いと簡単にトレードできてしまうため逆に面白くなくなるし、また高すぎるとトレードが楽しめないため逆にストレスが溜まる。しかし、このゲームにおいてはアメリカならではのFA選手がいつでも大量に待機している。いわば丸ごと二軍になっているようなものだ。これによって複数トレードがしやすいため審査は厳しいもののトレードを十分堪能できる。
 
そして、トレードシステム以上に驚嘆したのがそのシステムである。バッティングシステムはほぼパワプロ。しかし、投球システムは似ているようでまったく違う。
ピッチャーは4つの球を持っている。そのうち2つはストレートとチェンジアップで、あとはピッチャーにあわしてカーブ・スライダー・カットファーストボールなどを持っている(何とフォークが無い。メジャーでは故障する球として投げる選手はほとんどいない。だから野茂や吉井が通用したともいわれている)。ここまでなら持ち球に融通が利くパワプロだろう。しかし、パワプロと決定的に違うのは、パワプロの場合、画面に表示される球のポイントはストレートの時のもので、変化球の場合は球が飛んできてから変化する。そのため打つ前にそこにバッターがポイントを合わせても、球の変化を読んでパッティングカーソルを動かさなければいけない(ここらへんの説明はパワプロをやったことがないとわかりづらいかも)。しかし、グリフィーJRはどんな球種であろうとも打つべきポイントが画面に表示される。それでは簡単じゃないかと思われるかもしれないが、事実多少三振は取り難いが、それは2つのシステムによって解消されている。
 1つめは、パワプロは投球ポイントは完全に目に見える(オプションで消せたりもするが、そうするとほとんど打てない)。しかし、グリフィーJRでは投げている途中でも球が動かせる上、投手のモーション中は目隠しになる(きちんと言えばモーション中に投げた後の移動を先行入力し、それは目隠しで行う)。また、パワプロと違ってカーソルは1種類しかないのでそれでは当たらないという事も無い。
 2つめは、緩急が激しいという事だ。まず、パワプロと違って打者投手の距離が長い。つまり目で追える距離が長いので緩急がつけられる。カーブなどは実際の軌道のような弧を描くのでタイミングが取りづらいし、また初めてビデオゲームで本物のカーブを見たと言う気になる。
 つまり、パワプロでは投球ポイントだけを見て打つが、グリフィーJRではそれに加えて球の軌道を見る事によって球種を判断しなくてはならないので、現実問題としてストレートに振り遅れたり、カーブにタイミングがあわなかったりということがある。これが本当の野球のようで、ある意味アレンジされたゲームをやっていて、面白いから納得している、というのとは一味違うのだ。
 
 そして、それとは別に感動したのがこのゲームの野球に対するこだわりである。試合開始前には国家が流れ、胸に手を当てる選手がちゃんと表示される。7回には「私を野球につれてって」も流れる。残念ながら肉声はないが容量の問題なので続編では入るのではないか。そしてゲーム中。なんと音楽が無い!? そう、どんちゃん鳴らしているのは日本独特で、BGMは観客の拍手と歓声。ストライクを見逃そうものならホームであろうとブーイングである。そしてフルポリゴンの八頭身の選手は非常に細かい仕種を行う。ネクストサークルからバッターボックスに入って土をならす・・・その部分だけでも実に多彩なアニメーションだ。そしてダイビングキャッチやランニングキャッチをすればちゃんとそれに応じた投球モーションを行う。パワプロのようにどんな体勢で取っても即立ったモーションで投げるという事はない。やっていてこれほど野球をやっていると感じられるゲームは今までに無かった。
 
打った球の軌道は少し変だ。肩も全体的に強め。しかし、球の軌道にこだわる余り、ファミスタのようにセンター返しが存在しなかったり、パワプロのように1.3塁線を抜けるヒットが存在しないという事はない。ヒットを打った後、「ああ、野球の試合でもこんなヒットあったなあ」と思わせるのがグリフィーJRなのである。つまり、ヒットと言うものをこだわった結果の、少し変な軌道なのである。リアルと言うのは見た目ではない、ということを改めて思い知らされた。

このように非常によくできた野球ゲームである。これによって私もかなりメジャーリーグ通になってしまった。しかしながら、やっぱり日本の選手で野球をやりたいなあ、というのは変わらない。私の野球ゲーム探しの旅はまだまだ続く。  
    

メーカー
NOA
制作
angel studio
機種
N64
ジャンル
メジャーリーグ
舞台設定
リアルゲーム
aA
アメリカ任天堂は人気メジャー球団・シアトル・マリナーズの親会社でもある。そのシアトルにはマグワイア・ソーサと並ぶ英雄・ケン・グリフィーJRが在籍している。彼を主人公としてすえて発売されたこのゲームは彼の人気だけでなく、高い完成度で高評価を受ける。システムはパロプロ的なバッティングシステムを取り入れている。描画は非常にリアル。
98年 定価49$ 秋葉で輸入物を買おうとすると1万円前後。
99年には2が発売予定。予断だがN64版バイオハザードの開発もエンジェルスタジオが手がけている。
99/3/1
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