最強 羽生将棋
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かつてセタがアーケードで「スーパーリアル麻雀」を出した時、それは一種の革命だった。それは二つ。まずはイカサマが無かったこと。配牌は未だにインチキだが、一発リーチとか、相手の配を透視とか、いわゆるアイテムの存在が無かったこと。そしてキャラ。それまで劇画チックなキャラが主流な中、アニメ調のキャラを起用して大いにヒットした。その後もシリーズを重ねる毎にアニメーションなどを強化し、現在では脱衣麻雀メーカーとしてその地位を確固たるものにしている。そんなセタのもう一つの姿・・・それは任天堂のセカンドパーティーであるということだ。ファミコンの時より、数多くの将棋ゲームを発売し、セターン、プレステ登場後も「スーパーリアル麻雀」こそ移植したもののメインは任天堂。なんとスーファミにだって「スーパーリアル麻雀」は移植されている。
いわゆるコンシューマー機では、脱衣が寸止めで終わるか脱いでも乳首がないのであるが、任天堂はそんなに甘くない。脱衣自体が禁止である。例え靴下一枚でも脱衣麻雀なら没!。ウィザードリィのタイトルの裸の妖精を石像にし、真・女神転生のネコマタに服を着せ、メタルスレイダーグローリーのシャワーシーンなど、バックショットもボツ!で音だけでサクラ大戦も真っ青。パンスレストが同級生2を移植しようとした際にはゲームの目的をキスすることに変えさせ、挙げ句の果てには公序良俗に反するからと義母・教師・保母・バスガイド・旅館の女将とは恋愛禁止令。誰が買うねん。といか、売るなよ、そんなもの。それはセタも同じ。脱衣が駄目なら勝ったらデートだ!とスーファミで三作ほど出している。
しかしまあ、課長・島耕作ではテキストオンリーとは言え、ベットシーンもあったんだけど。「その日、二人は同じ宇宙を共有した」って・・・なんじゃ、そりゃ?
どうしてドラクエの「パフパフ」はボツじゃなかったんでしょうねえ。
そんなセタがN64のサードパーティー一番乗り。多くのメーカーが次世代機に移る中、(他のハードでも開発はしているが)セタは何故任天堂に残ったのか?しかもN64互換基盤まで開発。まさか「PZ」はそれで動いているのか?
疑問はさておき、実はこの最強 羽生将棋、任天堂のマイクロコードを活かした素晴らしき作品なのだ。
いわゆる次世代機で出る麻雀では、ポリゴンで配を打つとか、意味の無い演出が多い。他のゲームでも無意味なムービーとか、プレステなどポリゴン格闘は全て鉄拳にしか見えない。「ったく、無駄なムービー入れやがって」とは、よく聞かれる会話である。
しかし、そんな事言っている奴は碇シンジよりヌルい。それら一見無駄に見える行為も実は非常に効率的なのだ。例えばポリゴン将棋。ゲームハードには普通、CPUの他にもさまざまなチップが入っている。グラフィックエンジン・ポリゴンチップ・サウンドチップなどなど。細かく言えば、CPUにも役割分担がある。処理速度やムービー処理、画面書き換えなど、全てにおいて分担が決まっている。つまり、将棋を作ったら、ポリゴンチップは使わないわけだ。つまり無駄。だから使う。アクションゲーム作るとムービー処理に使う部分が使われないわけだ。これも無駄。だからムービーを入れる。そしてCD−ROMの容量も大体余るので余った分だけ音声を入れる。つまり、無意味であっても無駄ではないのだ。プレステの格闘がみんな鉄拳に見えるのは、みんな同じ性能のポリゴンチップを使っているからで、別にメーカーがナムコの真似をしているわけはない。
では、N64はどうか。実はN64にはポリゴンなどの特殊チップは積んでいない。じゃあ、あのマリオのポリゴンはどうしているかというと、全てCPUで処理している。じゃあ、スプライトしか使っていないヨッシーストーリーではポリゴンに割り当てられた部分のCPUは使っていないのか?
いや、使っている。
それはつまり、N64ではCPUの割り当てを自由に変えることが出来るのだ(正確にはCPUに付随しているRCPというプロセッサなのだが、原理を理解する分には問題はない)。これをマイクロコードの書き換えと呼ぶ。つまり、ポリゴンゲームなら、CPUの大部分をポリゴン処理に費やし、スプライトゲームなら、グラフィック処理に割り当てられる。つまり、ゲームの数だけハードは変わる。N64とはそういうハードだ。
だから羽生将棋ではCPUのほとんどをコンピューターの思考に割り当てている。だからグラフィックも音楽もヘボい。だけど処理速度は恐ろしく早い。今現在のハードでは最速だ。言っておくがドリキャは128ビットではない。あれはグラフィックエンジンの処理能力が128ビットなのであってCPU自体の処理能力は32ビットだ。
つまり、羽生将棋はN64ならではの、まさにゲームが変わったことを証明するゲームなのだ。サードパーティーがN64に参入しないのも、実はこのマイクロコードの書き換えをする根気が無いからだ。つまり、マイクロコードの書き換え命令プログラムを組むことができない。最初からどんなゲームを作るのかきっちり企画されていないと、ハードをどういうふうに使うかなんてわからないからだ。そしてただ与えられた箱に与えられた企画をはめ込んでいくだけのゲームばかりが大量生産されていくわけだ。
・・・何、言っていることがわからない?そりゃそうだ。羽生将棋はマイクロコードの書き換えをうまく表現し、マリオ64は初めてリアルタイムで完璧な箱庭を完成させ、ウェーブレースは単なる繰り返しの波でなく、リアルタイムで波の計算をし、全ての波紋はそれに沿っていて、F-ZERO
Xでは敵は単なる障害物ではなく、30台全部が行動を持ち、リアルタイムにすべて思考を持って操縦されている。だからN64は凄い。と言ってもわからないでしょ?
N64は確かにゲームを変えた。でもわからない。わからないから売れないわけだ。それがN64の悲劇でもあり、失敗でもあるわけだ。
・・・と、そんな事を羽生将棋をやりながら私はそんな事を思う。そう言えば、私は将棋が出来ないのにどうして羽生将棋を持っているのだろう?
メーカー
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セタ
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機種
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N64
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ジャンル
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将棋
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舞台設定
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将棋
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もっぱら「スーパーリアル麻雀」シリーズで有名なセタの開発した将棋ゲーム。女は出ない。もちろん脱がない。羽生の実写映像が堪能できる。栄えある64同時発売ソフトであり、64サードパーティーソフト第一弾でもある。
64のマイクロコード書き換え機能を活かし、コンシューマー機では他に類髄を見せない高速思考を誇る。まさに将棋をするだけために特化したゲーム。
96/6/23発売 定価9800円!?
実税価格は4000〜5000円で、中古なら3000円程度でも購入可能。
関連作品としては、通信機能を取り付けた「森田将棋
64」がある。
98/09/23
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