キングゲイナー
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「いまさら、キングゲイナー」
 ブレンパワードの時は、たまたま実家がWOWWOWに入っていたのでリアルタイムで見ていた。最終回の録画を、母親にデコーダの電源を落とされて失敗した時は発狂しそうになったが、何故かブレンパワードは毎週再放送していたのでそれを録画して事無きを得た。
 ブレンパワードは、アニメとしてみた時は余り良い作品ではない。しかし、富野節が大炸裂している作品であり、VGの後、しばらく仕事をしていなかった富野監督のリハビリとも言える作品だ(病気をしていたとも、Gガンダムの企画を拒否したために干されたとも言われているが真偽は不明)。その流れが間違いなくターンエーに繋がったわけで、個人的にはかなり好きな作品だ。
 そのターンエーの仕事が終わり、再び浮上したZの映画化やブレンの映画化は、何故か単館上映?(少なくともロードショーではなかったよね)のターンエー劇場版にすりかわった。その次がキングゲイナーになるわけだが、Vガンダム以降、ずっと月刊ニュータイプを買っていたのだが、ターンエーのストーリーをバラしまくるのに辟易して買うのを辞めてしまっていたので、アニメ界にはすっかり疎くなってしまった。よってWOWWOWに富野が再び降臨し、キングゲイナーなるアニメを放送すると聞いたのは、本放送も差し迫った頃だった。
 WOWWOWのデコーダーは、大学に合格して下宿した弟が持っていってしまった。しかし、私ももう社会人なのでお金にはそんなに困っていない。毎月発売されるDVDを買って見ることにした。ちなみにターンエーまではLDと平行して発売されていたが、キングゲイナーからはいよいよDVDだけとなった。
 
 ある程度噂は聞いていたが、ゲームと違ってアニメの噂など当てにならないから、初回を見て引っ繰り返った。「ザブングルかよっ!?」 かつての富野のアニメを思い出してそう叫んだ。
 ガンダム以降、リアルロボットといわれる路線を歩んだ富野の、唯一のスーパーロボット系の作品と言えるのがザブングルである。但しメカがへぼいのでスーパーロボット大戦にはほとんど出ていない。若し、いたとしても誰も使わないだろうが。
 キングゲイナー自体は、ブレン以降、富野が好む、「プラモとして売れない」ロボットだ。とどのつもり永野護系だ(永野護が世に出たのは富野が監督を務めたエルガイムではあるが)。変形も必殺武器も無い、ロボットものなのにストーリーで勝負しようという、相変わらずのへそ曲がりである。
 しかし、それが不満にならない、キャラクターの造詣である。何が凄いって、主人公やヒロインたちが本当に今時の子供たちそのままなのである。富野がもっとも忌み嫌う人種だ。かつて今時の子供を主人公に据えて、やっぱり主人公が気に食わないのでいじめまくって話が破綻したのは、隠しようもないがZガンダムである。本来、富野が理想とする子供像は、Vのウッソやターンエーのローランである。ウッソがあんなに活躍したのは、富野がウッソのキャラを好きだったというのは隠しようの無い事であろう。
 なのにキングゲイナーが破綻しなかったのは、私が言うまでも無いがゲインの存在である。ゲインを使うことによって富野は思いのままを作品に反映できた。だからあのような駄目主人公でも最後まで話が持った。最終回で主人公たちが敵の虜になってしまうのは、間違いなく富野に彼らへの愛が無いからだ。そしてそれを救うのは…もちろんゲインである。あの時のゲインの言葉は、そのまま今の若者たちに向けた富野の言葉なのかもしれない。
  戦士としての誇り、祭りを楽しんでみせる余裕、そう言った富野の理想とする、「よい大人」としての有り様をゲインが示すことによって、今時の駄目少年のゲイナーや、官僚社会の象徴であるシベリア鉄道(何があっても鉄道を引く。まさに日本の官僚社会だ!!)を映し出していく、それがキングゲイナーという作品であった。

 話には余り関わらないが、子供の無垢な台詞を言わせたい時はアナ姫を使った。ウッソが吐くような台詞を彼女に吐かせたことによって、キングゲイナーは無事に作品として紡がれたのであろう。
 そしてアクの強い様々なサブキャラたちは、きちんと『劇』を作って見せる、という今のアニメには無い、富野の自負なのだ。だから薄っぺらい小娘相手にへらへらするような声優のプロモーションアニメとは格が違う(薄っぺらい美少年相手でもいいが。もちろんあの作品のことである)。 
  
 ただ、不満はある。1本のストーリーとしてみた時は、スペクタルも何も無い作品なのだ。わざとそういう作りにしたのかもしれないが、逃避行の中で毎回ドタバタ劇をする…という話は確かに良かったのだけれども、VGもブレンもターンエーも、最終回のオチが良かったけれど、キングゲイナーはストーリーといえるものが無かったから、当たり前といえば当たり前なのだが何の変哲も無い最終回でした。良く言えば、このままずっとドタバタを見ていたい…という気持ちはありましたがね。
 
 ロボットものなのに、日常のドタバタコメディ。それが一言で言ったキングゲイナーでしょう。…やっぱザブングルやん。でもゲインがいるだけでも、この作品を見る価値はあります。私的には、ゲインはシャアより上のキャラだと思いますよ。
 …個人的には『ヤーパン忍法』が一番ウケましたがね。

2004/5/31
中村嵐
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