ありふれた日常

 冬の風は冷たい

 ファミレスのウェイターになった割には
 草むしりだとか、屋根裏の換気扇の掃除とか
 雑用ばかりしている気もする

 生垣の水撒きも 刈れたら自分の責任らしくて
 同僚たちはちゃんと残しておいてくれる そんな僕の日課

 責任を押し付けた店長も もう二代前 ただ義理堅く続けている
 そんな自分にあきれつつ 寒空に震えながらホースで水を撒く

 夏場はじりじりと肌をやいて そのままプールにでも行きたくなるけど
 太陽が出ていると油断していると 冬の風は容赦ない
 半袖の制服に 氷の飛礫が肌を切り裂く
 コートを着ててもいいらしいが なんとなくカッコ悪い…と僕は思う
 震えながらカッコつけて いや制服もカッコ悪いけど
 そうして冬に水を撒く

 少し遅刻の学生と 少しばかりのサラリーマン
 散歩するには中途半端で 近くのデパートも開いていない
 向かいのパチンコ屋の女性店員は 今日もマットを水洗いしている

 枯れかかっていた生垣に 若々しい黄緑 なんとなく僕の自慢
 ホースは3メートルばかり足りなくて 残りはバケツで水を撒く

 何の変哲もない ありふれた日常が
 今日もに心地好く刻まれていく そんな一日

 そう言えば僕、キッチンで応募したのに なんでウェイターなんだろう?

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