彼があの人を好きなのは知っている

 数学の問題を教えてもらう 本当は一人で解けるくせに
 社会のプリントの穴埋めを教えてもらう 簡単に調べられるのに

 テストの順位は いつも私の方が上だけど
 定理にしても 方程式にしても 教えられたらすぐ使えるのは彼

 男女の違いはあるけれど 同じ部活 私は部長で彼は副部長
 でも いつも練習の先頭に立つのは彼

 最初は見下していた でも、役割や順位が下だとしても
 自分より大きな存在だと気付いた
 普段は間抜けにも見えるけれど
 問題を解く彼の横顔
 シュートを打つ彼の背中
 その全てを見つめている私がいた

 彼があの人を好きなのは知っている
 彼は隠しているつもりらしいけれど 学年で知らない人はいない
 相手も悪い気はしないようで 端から見るのも恥ずかしいシーソーゲーム
 支柱を蹴って壊したくなるシーソーゲーム

 私が彼を好きなのは 恐らく誰も知らない 知られないようにしてる
 でも、それでいい だって彼はあの人が好きなのだから
 それでも私は 彼の側で見守り続ける その恋の行方さえも
 泣いてしまう夜もあるけれど でも、それでいい
 彼があの人を好きなのは知っているから…              
 

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