時の果ての少女
written by 神代 祐介

 ヴァズはシートに身を投げ出し、大きく息を吐き出した。 背の高い、しかし痩せて引き締まった身体は、ぴったりと席におさまる。 グローブをはめた手を、ぐっ、ぐっと何度も握り締める。指の関節が数度ぱきぱきと鳴る。身体は専用の保護スーツに包まれている。
 ゆっくりとヴァズは、両手を左右の操縦桿の上に置いた。
 ヴァズの瞳が眼窩の中をせわしなく動いて、視野の下半分を占める計器の数値、状態を確認する。両足はフットバーに置かれて動かない。
 そろそろと瞳があがって、ヴァズは風防の外の信号灯を見つめた。
 赤い円形のシグナルが点滅している。そのむこうに、真珠のように白い光が左右から、彼方に向けて伸びている。
 耳慣れたファンファーレが鳴った。ヴァズは操縦桿を握り締めた。
シグナルが点滅をやめた。
 同心円がそのスペクトルを短い波長域に変えながら、一点に集束していく。暖かな赤、澄んだ黄色、緊張した緑から、冷たい青へ。
 力強い白の光点が中央で輝くと、ヴァズは量子的時間が経過するのも待たずに大きくフットバーを踏み込んだ。ヴァズの身体は一瞬強く
シートに押し付けられ肉が歪み骨がきしんだが、システムがすぐに慣性を打ち消す。
 視界が背後に吹き飛んでいく。音もなく加速度も感じられない中でスピードを感じさせるのは唯一、コースを縁取る白い路面灯の、五百
Mおきの切れ目のみ。三秒ごとのその標識を目印にしながら、ヴァズは左の操縦桿を大きく前に倒した。ヴァズの視界を一瞬だけ横切った
路面灯が、すぐにのたうつように身をくねらせて元通り、ヴァズの両側におさまった。
 流線型の物体が左側から転がってきた。火を吹き機械の内臓をぶちまけながら宙を舞っている。ヴァズは両方操縦桿を倒し加速する。
宙に幾何学模様を描くようにヴァズの手がうごき、マシンの残骸は視界から消えた。風防に音をたてて何かの破片がぶつかった。
「後続はどうなってる?」
 ヴァズは言った。ヘルメットのスピーカーから応答がある。
『ゾディスがクラッシュ。他にも五台、脱落した』
「帝王の不運か。こっちには幸運だな」
 ヴァズは操縦桿を倒した。スピーカーの声が言った。
『甘いぜ。二位がぴったり食いついて来てる』
 ヴァズはアゴの先でヘルメットの中のスイッチを押した。風防の右隅に後方視界が映る。角張ったデザインの赤いマシン、下方から睨み
上げるような風防のマシンが、三百Mの距離を保って付いている。
『初めて見る…』
「いい腕だ。パイロットは?」
 沈黙があった。ヴァズはその間にきついカーブを三度クリアした。
「ローグ?」
『ああ…わかってる』
 ためらいがちに、声は続けた。
『驚くなよヴァズ。あいつは女性だ』

 一周目、ヴァズは周回記録をコンマ五更新した。後ろのマシンもコンマ三、周回記録を超えていた。
「女…か」
 ヴァズはもう一度後方の映像を見た。赤いマシンは先刻と寸分違わぬ位置から、ヴァズの背中をうかがっている。
『名前はフレドリカ・マシロ。十番人気だ』
 ヴァズが操縦桿を倒しカーブを曲がるも、カメラは以前中央に赤いマシンを捉えつづける。
「気にいらねぇな」
 ヴァズは言葉を吐き捨てた。
「しばらく通信を切るぞ。本気でやる」
『本気はいいけど、熱くなるなよ?』
「負けたら夜逃げもできないってことぐらい、わかってる」
 スピーカーが沈黙した。
 ヴァズは操縦桿の上で指を大きく開き、握りなおした。
 ヴァズはフットバーを踏み込んだ。スタートの時と同じように、加速度がかかった。間隔を見せずに行き過ぎる路面灯が、彼の加えた加
速の凄まじさを語った。ちらりと後方視界を見ると、赤いマシンは初めて小さくなりだしていた。
 ヴァズはカーブの細かい操作を誤らない程度に、後方視界に気を配り続けた。別のディスプレイを風防の左隅にも呼び出すと、二周目が
終わる頃にはヴァズは完全に他のマシンを突き放し、二位の赤いマシンがかろうじて、射程距離にヴァズのマシンを捉えている状態だった。
 三周目。この一周で勝負が決まる。スタートライン周辺の長い直線で、ヴァズは深呼吸をした。直後に赤いマシンが加速し、映像の中で、その影が大きさを取り戻していった。直線コースが終わる。赤いマシンが減速せずに突っ込んでくる。ヴァズは唇を歪めた。
「そんなもん…」
 ヴァズはインコースにマシンをねじりこんだ。接触寸前で、赤いマシンが減速する。そのカーブを出るときには、二機はほとんど一つに
つながっていた。何度もきついカーブの続く中で、ヴァズは一度も一位をゆずらなかった。
 最後のカーブに入る。先は直線、更にゴールが待っている。
 ヴァズはそのカーブを出る直前に、大きく操縦桿を傾けた。
 左右の路面灯がぐらりと揺れた。ヴァズの視界の中央を白い光が切り裂き、赤いマシンの姿が右から左へとぐるりと流れた。視界が一回
転し再び風防の中央にゴールシグナルが映ると、ヴァズは操縦桿を戻し猛然とフットバーを踏んだ。マシンは左右に路面灯を従えたまま加
速した。
 ヴァズはため息をつき、左右を見渡した。
「どうだ、ローグ?」
『見えないだろうけど、勝利のサインを出してる』
 スピーカーの声はくすくすと笑った。
『さあ、ゴールまで走れよ! 君は勝ったんだ!』
 ヴァズは後方視界を見やり、赤いマシンがコースに接触して停止しているのを見て、やっと笑った。

 マシンから顔を出すと、スタンドの歓呼の渦がヴァズを包んだ。
「日陰者には過ぎた賞賛だね」
 つぶやきながら、それでも顔は笑いながら、ヴァズはマシンを降りた。すぐ傍に、まっさらな青いつなぎを来た男が立っている。
 ヴァズはにやりと笑って、手を大きく振りかぶった。男もそれに倣い、次の瞬間、二人の掌ががしりと音をたてて出会った。
 ヴァズは彼の頭の上にぽんと余った手をのせて、大声で笑った。
「接続するときぐらい、身長のばしてもいいんじゃないのか?」
 ローグは肩をすくめて、ヴァズを見上げた。
「視点が変わると、整備がやりにくいんだ」
「これだからチビは大変だな」
「その代わり、俺は船の中で頭をぶつけたりしないぜ」
 ローグはヴァズの手を振り払うと、軽く頭をしゃくった。
「それよりヴァズ、後ろから怖い顔で睨んでるコがいるぜ」
 ヴァズの顔が引きつった。
「…こんなところまで追っかけてきたのがいるのか?」
 ローグは顔をゆがめて苦笑した。
「いくらでも心当たりがあるんだろうけどな、残念なことにその話じゃない。あの赤いマシン、乗ってたのは彼女だ」
「へー…」
 ヴァズは振りかえった。次のレースに備えて忙しい整備要員の中にまぎれ、じっと彼らを見つめている少女がいる。ローグが言った。
「俺達に何か用かい、お嬢さん。そんなところにいないでこっちに来なよ」
 少女はパイロット用の保護スーツを身につけていた。ヴァズはその完璧なスタイルを見て、小さく笑った。
「何よ」
 少女の眉が、ぐぐっと持ち上がる。その下の銀色の瞳がヴァズを睨んでいる。まだ幼さを残しているが、美しい。
「女性に向かって挨拶もせずに、何を笑うの?」
 ヴァズは笑顔のままで、言った。
「ごめんよ。俺は、ヴァズ・ラツギ。こいつは相棒のローグだ。フレドリカさん、だったっけ」
「…フレドリカ・マシロよ」
 少女はヴァズを見据えたまま、右手を出した。ヴァズは彼女と握手を交わした。
「いい名前だ。リッキィって呼んでいいかな」
「お断りよ」
「…そりゃ残念」
「よろしく、名パイロット」
 そう言ったローグとも握手を交わしてから、少女は腕組みをして、本題に入った。
「さっきのあれ、納得いかない」
「あれって? ローグ、俺何かしたか?」
 ヴァズは友人を振りかえった。ローグは微笑した。
「いいレースだったよ」
「とぼけないで、あのスピンよ。あんなの卑怯だわ」
 最後には、叫ぶように声が大きくなっていた。少女は堰をきらしたように、唇から言葉をあふれさせた。
「レースは公正に行われるべきよ。あれがなければ私はあなたのマシンを避けようとしなかったし、コースにぶつからずに済んだ。あれが
なければ最後の直線で、私のマシンはあなたのを抜いたわ。あなたがあのスピンを失敗して、私が操縦桿を倒さなかったら、衝突してお互
いのプログラムに重大な破損があったはずよ。あれは危険で人の弱みにつけこんだ、卑怯な手よ。優勝は私だわ」
「俺はフェイクをしくじらなかったし、あんたは操縦桿を倒した」
 ヴァズは動揺の気振りも見せずに言った。
「俺が本当にスピンしたと思った、あんたの負けなんだ」
「よくもまあ」
 ローグが少女に言った。
「ねえ君、フェイク・スピンは確かに皆あまり使わないが、それは上級者だけに許された技術だからなんだよ」
 少女はかっと顔を赤くした。
「私の判断は間違ってなかったわ」
「二流三流の相手ならね。ヴァズはちがう」
「こっちは死ぬ覚悟でやってんだよ」
 ヴァズは少女にぐいっと顔を近づけた。少女はわずかにひるんで身体を引いたが、ヴァズを睨み続けた。
「俺だけじゃない、コースの上のヤツはみんなそうだ。目の前でスピンがあろうと何があろうと死ぬ覚悟でフットバーを踏めなきゃ、この
レースには勝てないんだよ。今日はたまたま大きなクラッシュがあったから」
 ヴァズはそこで口をつぐんだ。少女は唇をへの字にしたまま、やはり黙ったままだった。
 ヴァズは少女から離れると、くるりと方向を変えて歩き出した。
「ローグ、これでヨツバ の最新式のやつが手に入るんだろ? アトレーユに積んどいてくれよな」
「え、ああ。ヴァズが帰ってくるころには積み替えておくよ」
「頼む。七日後には帰るからよ」
 ヴァズはローグに背を向けたまま、軽く手を振った。
「これが済めば、アトレーユは世界最速の船になるぜ!」
 ローグのその言葉に、ヴァズはドアの前で振り向いて、にやりと笑った。
「…あのひと、コロニーにいるんじゃないの?」
 ローグは瞳をぐるっと回した。少女がヴァズの消えて行ったドアを見つめている。
「なんだ君、まだいたのか」
「いちゃ悪い?」
「なんだかなぁ。彼はこの世界でもう十年もやってるんだ、かなうわけないだろ」
「…若く見えたけど」
「ガキの頃からやってるのさ。君はよくやった方なんだぜ、ヴァズに自爆覚悟で、フェイク・スピンまでやらせたんだから」
 少女は小さく鼻を鳴らした。ローグはため息をついた。
「俺ももう行くぜ。賭けの勝ち分をぶん取りに行かなくちゃ」
 ローグは一歩足を踏み出した。少女は顔を上げて、ローグを見た。
            ヴォイジャー    
「待って。あなた達、航海者でしょ?」
 ローグの二歩目が止まる。彼は振り返って、強張った顔で訊いた。
                      サイエンティスト
「だったら何なのかな、真っ白い肌の科学者さん?」
 ローグの表情を見て、少女は怯えたように身をすくませた。
「あの…べつに、悪気があって言ったんじゃないの。ただ、私ヴォイジャーの人と話したことなかったから」
「だから珍しかった?」
 ローグの声は、彼自身驚くほどとげとげしかった。
「あんたって人は、何もわかってないんだな。それに世渡りがド下手だ。ヴァズだけじゃなくて俺まで怒らせて、何が楽しい?」
「…ごめんなさい」
「ごめんなさい? 自分が何を言ったか、わかってるのか?」
 ローグは顔をしかめて、腕組みをした。
「口の聞き方に気をつけたほうがいい。航宙帰りのヴォイジャーにさっきみたいな言い方をしたら、確実に無事じゃ済まないぜ。気が立っ
てるからな。いろんな意味で」
「…はい」
 少女はケルギスのマオ のように、身体を小さくした。
「まったく、君みたいなお嬢ちゃんが何でこんなレースに出てるんだか」
 ローグは腕組みを解いて、少女を見つめた。
「ヴァズがどこにいるか訊いてたな。忠告ついでだ、教えてやるよ。
彼は今宇宙船の中だ」
 少女は目をまるくした。
「船から接続してたの?」
「そう。今も光速以上で旅をしてる」
 ローグは微笑して、頭上を見上げた。

 ヴァズは頭から接続機器を外し、傍らのテーブルに置いた。寝椅子の後ろに手をのばして、コンピュータの電源を落とす。
 ヴァズはため息をついて椅子から足を下ろし、首を傾けた。こきりと骨が鳴った。仮想空間から出た彼は、白いシャツに黒いズボンとい
ういでたちだった。
 ビニールの寝椅子がじっとりと濡れている。後ろから伸びた何本ものコードが、テーブルの上のヘッドギアにつながっていた。
 ヴァズは立ちあがった。部屋の中にはこの寝椅子のほかに、壁に埋めこまれたコンピュータ端末とモニター、そのすぐそばに粗末なベッ
ドがある。その上に脱ぎ捨てられていた黒い上着を羽織ると、
ヴァズはベッドに腰をおろした。
 数分間ヴァズの様子を見ていた彼女は、心を決めて、音声を組んだ。スピーカーからそれが出ると同時に、モニターを点けた。
『あの、お疲れのところすみませんけどぉ』
 モニターには最近組んだ、新しい髪型の顔を出した。彼女は顔が人間との相互作用に非常に重要であることを、よく理解していた。
「ルーンか、何だよ」
『あのですね、あたし達の後ろにぴったりくっついてくる船がいるのよ。ライズがいくら呼びかけても応答なし』
「海賊か?」
『かもしれない。ライズがブリッジに来てくれって』
「わかった、すぐ行くよ」
 ルーンの可愛らしい顔は、まだモニターから消えなかった。ヴァズは振り向いくと、その目を見つめて言った。
「まだ何か?」
 ルーンにつながったセンサーはヴァズの体温のわずかな上昇と、多量の発汗と判断できる情報を捉えていた。
 ルーンは何兆分の一秒かでプログラムを走査して、モニターの顔に小首を傾げさせた。
『随分汗をかいてるけど、大丈夫?』
 この声は、ヴァズの好きな映画の主演女優のものだ。
 ヴァズはしばらくルーンの映像を見つめてから、言った。
「お前って、ほんといい女だよ」
 ルーンはまた量子的時間のうちに最適な反応を探し、頬にあたる座標の画素の波長域を微妙に長くした。結果として、彼女の頬はわずか
に赤らんだ。
『ヴァズ?』
「まったく、かわいくない女が多い。まったく」
『おーい』
 ヴァズはぶつぶつつぶやきながら、立ちあがって部屋を出て行った。ルーンは今のヴァズの映像と音声を適当な場所に保存し、宇宙船全
体の管理にまわしてもまだ余っている処理能力の何千分の一かを使って、その意味をじっくりと分析し始めた。

 ヴァズは何分か金属の廊下を歩いて、ブリッジに入った。
 椅子が二脚、互いにやや斜めを向いて並んでいる。それぞれの椅子の背にはヘッドセットとグローブがつながっている。左側は使用中で、椅子に座った男が身につけている。空の右席の機器は、無造作にでっぱりにかかったままだ。
 壁はそのまま弧を描くスクリーンになっている。それは背中を斜めに向き合わせた椅子に対し、継ぎ合わせた球のような形に、椅子の一
つずつに対応していた。
「ライズ」
 左側の席についた男は、椅子ごとヴァズの方を向いた。
「来たか。問題発生だ」
 男はヘッドセットを額に跳ね上げた。青い瞳がヴァズを見据える。
皺が刻まれくたびれた顔の中で、瞳だけが生気を保っている。ヘッドセットの下の髪は白髪だった。
「これを見ろ」
 ライズは再び顔を機械の下に隠すと、スクリーンに向き直った。
ヴァズは、ライズの椅子のすぐうしろに移動した。
 ライズがグローブをはめた手で魔術のような仕草をすると、スクリーンの上で一つの映像が拡大された。瞬かない星々を背景にした、
灰色の物体の映像だ。
 中央のずんぐりした船体から、上下左右に四つの副船体が伸びている。
「ヴォイジャー艦だ」
 ヴァズは、自分の声の暗さに驚いた。
「おそらくな。あのツギハギが、サイエンティストの美的感覚の成果とは思えん」
「俺達の艦でも、芸術的なのはルーンだけだぜ」
『あら、ありがと』
「どういたしまして」
 ヴァズは笑わずに言い、右の自席についた。
「どうするよ、ライズ。逃げるのか戦うのか。ラムスクープを四つもつけてるからには、あちらさん相当足があるぜ。…こっちはしばらく
整備もしてない老朽艦だ」
「逃げながら戦う。私が舵をとるから、ヴァズは砲をたのむ」
「だから途中で港に入っておけばよかったんだ。…逃げきれないぜ」
「その余裕があれば、そうしていた」
 ライズがぼそりと言った。ヴァズは肩をすくめ、グローブをはめながら老人を見た。
「よっぽど高価なもの積んでるんなら別だが、今回はほとんど船倉は空だよな? 乗せたのは、一度も顔を見せない乗客だけ。…それなの
にやつらは、この広い宇宙で俺達を追ってきた」
 ライズは答えない。ヴァズはヘッドセットを取りあげ、それをかぶらずに手の中でもてあそんだ。
「まああんたが隠し事するなんて、よっぽどなんだろうけど。…これが終わったら、説明してもらいたいね」
 ライズは、厳しい声で言った。
「さっさとそれをかぶれ。奴が加速した、本気でこちらを襲うつもりらしい」
 ヴァズは舌打ちした。
「頑固ジジイめ」
 ヴァズは、へッドセットで頭を包んだ。コンピュータが彼に、グローブによって入力機器として認識された両腕と、周囲を取り囲む莫大
なボタンをつけたパネルを見せた。
 ヴァズはグローブをはめた手を、ゆっくりと握り締めた。
「損な勝負だ。勝っても元金が保証されるだけだってのによ」
「だからと言って、手を抜けば死ぬぞ」
「わかってるよ。どんな勝負だって、受けた以上は真剣にやるさ」
 ヴァズの前のスクリーンには多数の情報が表示され始めた。相手艦との相対速度、距離、それらの相関関数を示すグラフ、次々に準備を
済ませていく砲の状態の報告。
『来たっ、ミサイル!』
「ヴァズ」
「やってるよ!」
 ライズが艦首を大きく揺らす。ヴァズの指が、猛然とパネルの上を舞い始めた。
 

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 創業二百年の宇宙船メーカー。製品開発の独自性と品質の高さに定評がある。
 ケルギス・コロニー産の愛玩動物。丸まって眠る姿が愛らしい。


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