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第四話 キ・ラ・イ・好き

〜〜フィナーレ〜〜
 奇妙な熱気に会場は包まれている。しらけているわけでは無論ないが、 所謂格闘技の会場に於けるあの一種熱狂的な活気はない。
 もっとも、それも無理のないことかもしれない。ここにいる観客のほとんどは 格闘技に興味のある人間ではなく、選手たちの父兄や友人といった人々なのだから。
 七月の第二日曜。まだ夏休みまでは少し間がある。例年よりも早く開かれた、 夏の総体、県大会。その会場に、百合沢朱音はいた。

「そういえば、冬馬さんの後輩ってどなたなんですか?」
 隣に座っている冬馬へと朱音がそう問いかける。一瞬意表を付かれたような表情を浮かべ、ああ、と曖昧な声を冬馬が出した。
「四條・・・何だっけ?」
「おいおい、しっかりしてくれよ。貴美子だよ、四條貴美子。去年の大会で優勝した。 一応、お前も見に行ってただろーが」
 後ろの席に土屋と並んで座っていた大滝が苦笑しながらそう言う。
「あまり・・・興味がなかったからな」
「ってことは、お前、今の試合も適当に見てただろ? 一回戦終ったぞ?」
「ふぅん」
 どこか上の空といった感じで冬馬が頷く。軽く肩をすくめただけで大滝も視線を 試合場の方に戻した。
「えっと・・・去年の大会で優勝したってことは、その人が一番強いってこと ですか?」
 沈黙がきまずいのか、朱音が冬馬にそう問い掛ける。視線を試合場に向けたまま冬馬は肩をすくめてみせた。
「別に・・・。大会と言っても石川流(うち)だけの大会だし。まぁ、門下生の数だけは多いから、全国でも五本の指にくらいは入れるかも知れないけど」
「でも、山学に推薦で入ったんでしょ? あそこ、けっこう強いのよね。私の知り合いもいるし、頑張って欲しい所ではあるけど」
 土屋の言葉に大滝が肩をすくめた。
「まぁ、今日は団体戦はないけどな。とりあえず、山学の連中は全員一回戦は突破したみたいだけど」
「あら、タキ、もしかして全部チェックしてるの?」
「んにゃ、可愛い子だけ。山学は可愛い子が多いからたまたま、ね」
「呆れた・・・」
 後ろでかわされる土屋と大滝の会話に、くすっと朱音が笑みを漏らした。 何となく不機嫌そうな表情で冬馬が大滝の方を振り返る。
「で、面白そうな奴はいたか?」
「んー、そうだな。
 山学の中井美樹にナーム・ディオニシモ・広瀬。橘の井上麻弥に藤本操。とりあえず こんなもんかな、面白いのは。特に中井ってのは面白そうだよ」
 頬杖をつきながら大滝がそう言う。僅かに冬馬が眉をひそめた。
「ナーム・・・?」
「ほら、一人髪の毛オレンジなのがいただろ? あれだよ。染めてるのかとも 思ったけど、名前からするとどっかのハーフじゃないかな。
 ま、実力的にはまだまだだけど、別の意味で面白いと思うよ、彼女」
「ふぅん。で、誰が優勝する?」
 冬馬の問いに大滝が目をつぶる。
「中井、かな。実力的には藤本もいい線いってるけどね。まぁ、彼女が一番俺たちに近いんじゃないかな」
「最近じゃ、ずいぶんおとなしくなったんだけどね、あの子も」
 苦笑とも微笑ともつかない形に唇を歪めて土屋がそう言う。三人の視線を受けて彼女は軽く首をかしげた。
「何・・・って、ああ、さっき言ったでしょ? 知り合いが山学にいるって」
「お前がしこんだのか?」
「ううん。ただの近所の子よ。そんなに親しかったわけでもないから、向うが私のこと覚えてるかどうか怪しいもんだけど」
 軽く肩をすくめながら土屋がそう言う。お前なーという大滝の言葉を聞いていると、 仲がいいな、と、いつもながらの感想が浮かぶ。恋人というのとはちょっと違う、本当に友達のような会話。よく、男と女の間で友情は成立しないなんて 言うけれど、この二人を見てるとそんなことはないんじゃないかと思えてくる。
「退屈じゃない?」
「え? あ、そんなことないです」
「そう? 瑠果が無理いって連れてきたわけだし、退屈なようなら・・・」
 帰ってもいいよ、と言おうとした冬馬に慌てて朱音が首を振る。
「こうして冬馬さんの横にいるだけでも私、嬉しいですから。
 ・・・あの、でも、冬馬さんの方こそ退屈そうじゃありませんか?」
「そう見える?」
「あ、あの、違ってたらごめんなさい。でも、そんな気がしたから・・・」
 朱音の言葉に冬馬が自嘲気味の笑みを浮かべる。
「ま、確かに、ね・・・。やってる連中は真剣なんだろうけど、やっぱり『試合』 だから。正直、退屈してる部分はあるよ」
「・・・殺し合いじゃないから?」
 何気なく言った言葉に冬馬がびっくりしたような表情を浮かべる。
「さらって怖いこと言ったね、今」
「ご、ごめんなさい」
「謝るようなことでもないとは思うけど・・・。まぁ、俺も実際に人を殺した ことはないからね。あんまり偉そうなことも言えないんだけど」
「本当に人を殺したことがあっちゃまずいだろーが、馬鹿」
 こつんと軽く後ろから冬馬の頭を大滝がこずく。
「平和な日本で、実戦想定の武術なんて学ぶ必要なんてないしな。いいんだよ、 スポーツ空手で」
「まぁ、な・・・」
「ったく。朱音ちゃん、何か飲みたいもの、ある? ちょっとそこの自販機まで行って くるから、リクエストがあればついでに買ってくるよ」
 腰を浮かせながら大滝がそう言う。ちょっと慌てたような表情を朱音が浮かべた。
「あ、あの、私が・・・」
「いいって。おら、冬馬。お前のリクエストは?」
「・・・マックスコーヒーのホット」
 後ろから頭をこずかれた冬馬がぼそっとそう言う。一瞬嫌そうな表情を大滝が浮かべた。
「マッカンはともかく、ホットぉ〜? 今、夏だぞ?」
「会場の入り口から歩いて五分の所の自販機にあった」
「あ、そ。そこまで歩いていけと・・・あー、はいはい、分りましたよ。瑠果はポカリだろ?」
 大滝が視線を土屋の方に向けてそう問い掛ける。んーと顎に指をあてて彼女は小さく唸った。
「んーと、マッカンホットに対抗するには・・・」
「せんでいい、せんで」
「じゃ、さらさらトマトね」
「お前な・・・。俺、あれはウチの大学でしか見た記憶がないぞ? その辺に売ってるような代物なのか?」
「なかったらサスケでもいいけど?」
 しれっとした顔で土屋がそう言い、がっくりと大滝がうなだれる。
「おまーらなー。俺は自分がファンタ飲みたいからついでにって言ってるんだぞ。 それをマッカンホットださらさらトマトだサスケだと・・・」
「おい、修司。マックスコーヒーをその辺のキワモノと一緒にするな」
「あ、ちょっと、シズ。キワモノ呼ばわりは酷いんじゃない?」
「千葉の誇りとそんな妙なもんを比べるのがそもそも間違いだろ?」
「あ、あの・・・」
 一種異様な盛り上がりかたをしている三人の会話に割り込めず、朱音がおろおろしている。 ひょいっと軽く肩をすくめると瑠果は大滝の腰の辺りを叩いた。
「ポカリとファンタ、二つずつね」
「了解」
 にっと小さく笑うと大滝が席を立って歩きだす。座席のせもたれに体重を預けると軽く冬馬が息を吐いた。
「ファンタって、何買ってくるんだろうな?」
「賭ける?」
 冬馬の呟きに、悪戯っぽい笑みを浮かべて土屋がそう言う。苦笑と共に冬馬は首を横に 振った。
「やめとくよ。どうせろくなもん買ってきやしない・・・って、あ、そうだ、朱音ちゃん。 ポカリスエット、嫌いじゃない?」
「え? 別に・・・普通、ですけど」
「じゃ、いいや。瑠果、ファンタはお前の担当な」
「むー。ま、しかたないか」
 しかめっつらを作ってそう言うと、弾けるように土屋は笑った。

「たーだいま。試合、今どの辺?」
「おっそい、タキ。一体どこまで行ってたのよ?」
 ビニール袋を手にした大滝がへへっと笑う。
「や、そこの自販機、壊れてやんの。仕方ないから外のコンビニまで行ってきた。
 はい、朱音ちゃん。ポカリでいいだろ?」
「すいません。いただきます」
 ぺこりと頭をさげて朱音が冷えた缶を受けとる。自分の手元に放られた缶を受けとった 冬馬がけげんそうな表情を浮かべた。
「本当に買ってきたのか・・・?」
「ま、ついでだし。ほらよ、瑠果」
「・・・ふぅん、私が紅茶はレモンしか飲まないって知っててミルク買ってくるのか」
「そりゃ、おかしな注文つける奴には当然の報いって奴だな。で、試合、どの辺だって?」
 自分の席に腰をおろしながら大滝がそう問いかける。手の中でホットの缶をいったりきたり させながら冬馬が答えた。
「準々決勝第三試合。さっき中井と藤本が準決勝に進出を決めたとこだ。これから 広瀬と井上が戦うとこだな」
「あらら、もったいない。どうせならその四人のカードは準決勝と決勝で見たかったんだけどな。 ま、しゃーないか」
「でも、そんなに面白い対戦になるかな、これ」
 言葉とは裏腹に楽しそうな表情で土屋がそう呟く。今日、四人の中で一番試合を楽しんでいるのは 間違いなく彼女だろう。大滝も楽しんではいるだろうが、どちらかというと可愛い女の子の観賞を していると言った方が正しい気もする。
「さて。順当に行けば広瀬の負けだけどな・・・」
 にやにやと意地の悪い笑みを浮かべて大滝がそう言う。番狂わせを期待しているのかな、と、 朱音は心の中で首をかしげた。
 試合場で審判が開始を告げた。高校生の大会といっても、準々決勝ともなるとそれなりに レベルが高くなる。観客たちの視線を浴び、広瀬と井上、二人の選手が互いに技を繰りだす。
「あっ・・・!」
 小さく朱音が声を上げた。井上の突きを受け切れずに広瀬が膝をつく。審判が一本を告げ、がっくりと広瀬がうなだれた。ばさりとオレンジの髪が彼女の顔にかかる。
 勝負あり、と、誰もが思った瞬間。ためらいなく放たれた井上の蹴りが広瀬の胸と首の間、ちょうど 鎖骨の辺りに吸い込まれる。大きく吹き飛んだ広瀬に、誰かが悲鳴を上げた。
「あっちゃー。やっぱりやったか」
 小さく大滝がそう呟く。その呟きを耳では捕えながら、朱音と冬馬は視線を試合場の方に向けていた。
 山学の空手部員たちが次々と試合場の上に登る。傲慢ともいえる態度で井上は彼女たちを迎えた。
「ま、油断してる方も悪いんだけどねー。スポーツの試合であれはちょっとやりすぎかな」
「といっても、あれで鎖骨折れない辺りは『スポーツ』だけどな」
「ま、ね。あ、あれ、中井さんとこの双子の片割れじゃない。男子の試合って午後からのハズなんだけど。 恋人を傷つけられて怒る男、か。いいわねー」
 どこか呑気な口調で土屋がそう言った。彼女の言葉通り、男子が一人試合場の上に登っている。先頭にたって井上を睨んでいるのが彼だ。橘の部員たちも試合場に登り、一触即発の緊張がただよう。
「お、場外乱闘の始まりかな?」
「あんたねー、野球やプロレスじゃあるまいし。・・・ああ、美樹ちゃんが止めに入ったわね」
「大丈夫、でしょうか・・・?」
 不安そうな朱音の言葉に、土屋はひょいっと軽く肩をすくめた。
「大丈夫でしょ。自分たちの立場が分ってないバカはいないでしょうし」
「あ、いえ、そうじゃなくて・・・あの、広瀬さんのこと、なんですけど」
「え? ああ、そっちか。まぁ、大丈夫じゃないの? せいぜい少し気を失うぐらいよ、あの程度なら。 少くとも、命に別状はないわね」
 タンカで広瀬が運ばれていく。それに付き添っている少年のことが、何故か、朱音の印象に残った。

 そして、決勝戦である。対戦するのは一昨年、昨年と二連続で優勝してきた藤本操を破った山学の中井美樹とその藤本の後輩であり、準々決勝で危うく乱闘騒ぎを起しかけた井上麻弥だ。シーンと会場は静まり返り、 異様なまでの緊張感に包まれている。
「なんだか・・・殺気だってますね」
「井上にしてみれば、藤本は憧れの先輩であり、同時に目標でもあっただろうからな。それを倒した中井に敵意を持つなってほうが無理さ。中井だって後輩にあんなことをされちゃぁ・・・」
 頭の後ろで手を組み合せると大滝がそう言う。苦笑まじりに土屋が呟いた。
「死人が出なきゃいいけどねー」
「瑠、瑠果さん!?」
「お、始まった」
 反射的に後ろを振りむいた朱音が、大滝の呟きに慌てて試合場の方に視線を戻す。
 攻めているのは井上の方だ。中井をガードもろとも叩き潰そうとしているかのように連続して蹴りを放つ。 その勢いに押されるようにジリジリと中井は後退していった。やがて、その足が場外のラインを踏み越える。 だが、井上の攻撃は止まらない。審判が慌てて二人の間に割ってはいり、二人を開始線まで戻らせる。
「中井さん、大丈夫でしょうか?」
「むしろ心配なのは相手の方だがな。中途半端は一番危険なんだ。昔から言うだろ? 『生兵法は怪我の元』って」
 ぼそりと冬馬がそう呟く。その言葉は次の瞬間に証明された。振り上げた井上の右腕へと、カウンターで手刀を叩き込んだのだ。腕を押さえて数歩下った井上にすぐに追い打ちをかけようとはせず、中井がポニーテールにしていた髪のゴムに手をやり、外す。
「あ、セーフティロック、解除」
「何よそれ?」
「やー、ほら、ありがちじゃない。そーゆーのって。自己暗示とかさ」
「タキ、あんた、漫画やアニメの見過ぎなんじゃない?」
「だが、実際に動きが変ったな」
 大滝と土屋の会話に、ぽつりとした呟きで冬馬が割り込んだ。えっと小さく声を上げて土屋が視線を 試合場の方に向けた。
「あら、ホント」
 ガードの上から連続して中井が井上に手刀を叩き込む。もちろん井上の方もガードしているが、 何度も打ち込まれた痛みのせいか両腕がさがった。そこへ中井の渾身の正拳突きが捻じこまれる。 まともにくらって場外ラインの外へと井上の身体が転がった。ふぅっと軽く息を吐いた中井の勝利が宣告される。
「ふぅん。まぁまぁ、ってとこか。シズ、感想は?」
「最後に手加減したのは、まぁ、御愛嬌ってとこだな。スポーツやってる人間としては上出来だろ」
「ま、楽しめたよな、実際。さて、手に汗握ったら喉が乾いた。何か買ってくるけど、リクエストは?」
 そう言いつつ大滝が立ちあがろうとする。慌てて朱音がそれを制した。
「あ、今度は私が行きます」
「そう? 悪いね。じゃ、俺はポカリ。なかったらアクエリアス」
「んーと、同じでいいや。シズは?」
 土屋の問いに、冬馬が視線を宙にめぐらせる。
「そう、だな。何でもいいや」
「シズ、それ、頼まれる方にとっては一番迷惑な指定なんだけど?」
「・・・じゃあ、俺も二人と同じで」
「はい。じゃあ、ちょっと行ってきますね」
 ぺこりと軽く頭をさげ、朱音はそう言った。

 試合会場から出ると、シーンと周囲は静まりかえっている。人気のない廊下を少し歩き、角を曲ると自販機が 並ぶ休憩所だ。ポケットから財布を取り出そうとした朱音の足元に、ころころっと一枚の百円玉が転がってくる。
 ひょいっと百円玉を拾い上げると朱音は視線を自販機の前に立つ少女へと向けた。見間違えようのないオレンジの髪。ナーム・広瀬だ。既に制服へと着替えている。
「あの、これ・・・」
「ダンケ。それ、最後の百円玉だったのよねー。失くしちゃったらどうしようかと思ったわよ」
「えと、広瀬さん、でしたよね?」
 手を出す広瀬へと百円玉を渡しながら朱音がそう問いかけた。怪訝そうな表情を広瀬が浮かべる。
「そうだけど・・・あんた誰よ?」
「あ、ごめんなさい。私、百合沢朱音っていいます。あの、さっきの試合で蹴られたところ、大丈夫ですか?」
「あん、見てたの? ったく、格好悪いとこ見られちゃったわ。別にどうってことないわよ、あんな へなちょこキック」
 軽く肩をすくめ、いかにも余裕ありげに広瀬がそう言う。もっとも、見るものが見れば強がりが一目瞭然という態度ではあったが。その強がりに気付いているのかいないのか、朱音はちょっと首を傾げて問いを重ねた。
「さっき、怒って試合場に登った男の人って、広瀬さんの恋人なんですか?」
「なっ・・・なんなのよ、あんた。そんなの、あんたには関係ないでしょう!?」
 口調が明かに早くなり、頬も僅かに赤くなっている。恐縮したような表情を浮かべて朱音は頭をさげた。
「そうですよね、ごめんなさい。ただ、ちょっと羨ましかったんです、あなた方が」
「へ・・・羨ましい?」
「私、片思いしてるんです。ずっと。
 あの、一つ、変なこと聞いてもいいですか?」
 どこか思いつめたような朱音の雰囲気に飲まれたのか、はぁっと大袈裟な溜め息をついて広瀬は肩をすくめた。
「とりあえず、聞くだけは聞いてあげるわ。で、何よ?」
「もし、あなたが好きになった人が、自分以外の『誰か』を既に好きになっていたとしたら、あなたはどうしますか?」
「はぁ?」
 よく分らないというような表情を浮かべた広瀬に、朱音はもう一度問いを繰り返した。
「あなたが好きになった人が、自分以外の誰かに恋をしていたら・・・あなたはどうしますか?」
「・・・あんた、バカァ?」
 本当に呆れた表情と口調で広瀬がそう言う。意表をつかれたのか、朱音が固まる。その間に一気に広瀬はまくしたてた。
「早い話、あんたその男が好きなんでしょ。だったらあれこれウジウジ悩むよりドーンとぶつかってった方が数万倍 ましじゃないの。
 大体ねえ、あっちが自分を好いてくれてるからあっちのことを好きになったわけ? 違うでしょ? あんたが、 その男のことを好きになったんでしょ?」
「は、はい・・・」
「だったらな〜んも問題ないじゃない。自分のことを振り向いてくれないんなら、どんな手を使ってでも振り向かせるのが恋愛なんじゃない。まったく、こんな簡単なこともわかんないからあっちが振り向いてくれないのよ。
 今は他の誰かの事を見てるとしても、絶対に最後は自分のものにしてみせる、ぐらいの気持ちを持たないでどうすんのよ」
「それで・・・いいんですか?」
「いいとか悪いとかの問題じゃないわよ。いい? 恋愛っていうのはね、幸せになった奴が偉いのよ。それに、 そこであーだこーだ悩んでても何も変らないでしょ? 何が正しいかなんて結局のところ誰にも分んないんだから、 後になって後悔しないように精一杯の努力をするべきよ。少くとも私はそう思うわね」
 彼女の言葉が正しいのかどうかは、分らない。ただ、これだけの自信を持って断言できる彼女が、羨ましくもあり、また、 少し妬ましくもあった。
「ナームちゃん? ジュース買いに行くって、いつまでかかってんのよ? そろそろ戻らないと・・・あれ?」
 廊下の反対側から歩いてきた少女−−中井美樹が朱音の姿に気付いて言葉を途切らせた。
「ナームちゃんの知り合い?」
「そうゆうわけじゃないけど・・・」
「あ、あの、私、土屋さんの友達で、百合沢朱音っていいます。中井さんとは知り合いだって土屋さんは言っていましたけど、 覚えていらっしゃいますか?」
 朱音の言葉に、少し記憶を探るような表情を中井が浮かべる。
「土屋・・・って 、もしかして、瑠果さん?」
「あ、はい。そうです」
「そっかー。瑠果さんが見に来てるんだったら、もうちょっと考えた戦い方したのになぁ」
 ぽりぽりと頬を掻きながら中井がそうぼやくように呟いた。僅かに首をかしげていた広瀬がポンと手を叩く。
「あ、そ〜だ、ねぇねぇ、先輩。もし先輩が好きになった人にもう誰か別の好きな人がいたらどうする?」
「え?」
中井はきょとんとして一瞬固まる。しかし、少し上目遣いになって考えた後、苦笑を浮かべた。
「もう、いきなり何よ。ナームちゃんたら、雄弌とうまくいってないの? あいつの初恋はナームちゃんだと思ってたんだけど,昔の彼女でも現れた?」
「ち、違うわよ! そっちの彼女・・・百合沢さんが私にそーゆー質問してきたの。だから・・・」
「そうなの?」
「あ、はい。あの・・・中井さんなら、どうしますか?」
 朱音の言葉にちょっと困ったような表情を中井が浮かべる。
「そうねえ、私なら・・・」
「中井さんなら?」
朱音が身を乗り出す。中井はますます困った顔になる。
「・・・別に、何もしないわ」
「え?」
「だから、そのまま、普通にね」
「・・・それで中井さんは満足なんですか?」
 納得しているようなしていないような、そんな複雑な表情で朱音がそう問いかける。軽く中井は苦笑を浮かべた。
「まあまあ、話は最後まで聞いてよ。・・・私は、自分がその人のことを好きだって気持ちを大切にしたいから、 ただそれに素直にいたいだけって言いたいの。
 それに、好きな人が誰もいないって人の方が少ないって思わない? 現に、あなたはその人が好きで、その人は別の人が好きで ・・・そしてその二人は付き合ってないって事は、その別の人も他にってことなんじゃないの?」
「そ、それは・・・でも、そんな事を言ってたら何も・・・」
「何も始まらない? そんな事はないわ。だって、あなたがその人を好きになった時点でもう何かが始まっているはずだもの」
 中井の言葉に朱音が首を傾げる。広瀬も黙って中井の言葉を聞いていた。
「始まってる・・・何か?」
「好きな気持ちに素直でいればそれでいいじゃない。結果がどうなるかなんて、そんな事は誰にもわからないわ」
中井が少し寂しそうな表情を浮かべるので、朱音は一瞬息を呑む。しかし、すぐに質問を浴びせた。
「そばで見ているだけで、本当に幸せになれるって中井さんは思ってるんですか? 愛する人と結ばれなくてもいい、 ただそばにいられればそれで満足だって、本当にそう思えますか?」
「・・・じゃあ、百合沢さん。逆に聞くけれど、無理矢理に相手と結ばれて、それで自分の好きな人の気持ちを 傷つけてしまってもいいの? その可能性は、怖くない?」
「え?」
「愛する人の心を傷付けてでも結ばれたいなんて、そんなのは自己満足にしか過ぎないわ。そっちの方がよっぽど間違ってるって、私は 思う。恋愛は勝ち負けのゲームじゃないもの。二人で何かを育てる・・・そう、新しい何かを創ることだと私は思うから・・・」
 パチパチパチ。中井の言葉に拍手が重なる。この休憩所から延びる三本の廊下、その最後の一つから手を叩きながら一人の女性が 姿を現わした。はっと朱音が表情を凍り付かせる。
「恭子さん!? どうしてここに・・・」
「さっきの試合同様、綺麗な意見ね、美樹ちゃん。そっちの、ナームちゃんだっけ、ハーフの子のまっすぐな意見とも 違う意味で、汚れをしらない意見だわ」
 水瀬恭子の言葉に、まずナームが真っ先に反応した。
「私はハーフじゃなくてクォータよ。大体、なんなのよ、あんたは。いきなり出てきて、勝手なこと言ってくれちゃってさ」
「あらあら、駄目ねぇ。目上の人にむかってあんたなんて言ったりして」
「危な・・!」
 何気なく恭子に近寄った広瀬の肩を掴んで中井が引き戻す。それに少し遅れて恭子の放ったハイキックが広瀬の頭のあった辺りを 通り過ぎた。
「うーん、やっぱりスカートだと蹴り技は遅れるわねぇ」
「ちょ、ちょっと、何を・・・!?」
 広瀬を後ろに庇いながら、中井がそう問いかける。笑顔のままで恭子は肩をすくめた。
「教育的指導、って奴ね。あら、怖い顔。もしかしなくても、怒ってるの?」
「当り前です! いきなり・・・きゃっ」
 抗議の言葉を続けようとした中井が、小さく悲鳴を上げて上体をのけぞらした。恭子が三本貫手と呼ばれる形で 目を狙ったのだ。もしあと少し中井の反応が鈍ければ、確実に目を刔られていただろう。
「恭子さん! 何を考えてるんです!? やめてください!」
「大丈夫よ、朱音ちゃん。この子、これぐらいは慣れてるみたいだもの」
「いいかげんにしてください! 本気で怒りますよ!?」
 態勢を立て直した中井が怒鳴る。クスクスと笑うと恭子は肩をすくめた。
「本気になって欲しいから、こうしてるんだけど? メインイベント前の暇潰しにつきあってちょうだいよ」
「恭子さん! やめてください! 人が来ますよ!?」
「別に私は人に見られたって問題ないもの。ま、高校生が乱闘騒ぎなんて起したら困るかもしれないけど、ね」
 言いながら、恭子がすっと中井との間合いを詰める。ぎゅっと下唇を噛みながら中井が構えた。
「ナームちゃんは人を呼んできて! 早く!」
「そうねぇ。急がないと、死体が一個、出来ちゃうかもしれないものねぇ」
「恭子さん!」
 朱音の言葉に耳を貸そうともせずに恭子が中井の膝を狙って蹴りを出す。膝を正面から蹴り抜くような形で。 それを避けながら中井は髪のリボンを取った。
「せいっ!」
 中井渾身の突き。それを腕を交差させて恭子が受ける。ふっと口元に笑みを浮かべると恭子の身体がぐっと沈んだ。
「あ・・・!?」
 地面の沈む反動を利用した、肩からの体当り。中国式の靠と呼ばれる技だ。打撃としての威力はほとんどないが、 この技を受けて踏み留まるのはかなり困難という、いわば相手を転ばせるための技である。
 半ば吹き飛ぶように転がった中井へと恭子が足を振り上げる。
「駄目!!」
 悲鳴に似た声は朱音と広瀬、どちらのものだったか。ひゅんっという風を切る音がその声に重なった。
 ぱしっと、自分の頭めがけて飛んできた物体を恭子が振り向きざまに受けとめる。どこか笑みを含んだ表情で 恭子は手の中に収まったジュースの缶を軽く上に投げた。
「邪魔するの?」
「いやいやいやいや、流石に転んでいる女の子の頭を震脚で踏むのはマズイでしょう。
 どうせ趣味を楽しむんなら、自分と互角で同じ趣味の相手をやらなくちゃ。ね?」
 口元に笑みを浮かべ、男がそう言う。端正と呼べる顔立ちをしているし、身につけているのもちゃんとしたものなのに、 何故か汚れた感じのする男だ。どちらかというと、髪をボサボサにし、不精髭でも生やしていたほうがしっくりくる、 そんな雰囲気を持っている。
「例えば、あなたと?」
「そうですなぁ。どうせなら、場所も選びたいものですな。ここは殺し合いにはちと不向きでしょう。ま、 どうしても、というなら、自分はそれでも構いませんがね」
 顎の辺りに手を当て、男がそう言う。クスっと笑うと恭子は恭子は肩をすくめた。
「おかしな人ね。何だかやる気が失せちゃったわ。ね、名前、教えてくれるかしら?」
「斎木大祐(さいきだいすけ)。あなたは?」
「恭子よ。水瀬恭子」
 恭子の言葉に、斎木と名乗った男が僅かに目を見開いた。
「いやいやいやいや。なるほど、あなたが水瀬恭子さんでしたか。世界は広いようで狭いというのは、本当のよう ですなぁ。薫の目を抉ったのはあなたでしたか」
「薫? ああ、あの男。ふぅん、あなたも瑠果の関係者なんだ」
「おっと、勘違いしないでくださいよ。自分と薫はいわば同期のライバルって奴でしてね。今日は久し振りに手合せしようと 思ってきたんですが。
 いやいやいやいや、しかし、女の子に左目を刔られたと聞いた時には奴も腕が落ちたもんだと思ったわけですが、 あなたが相手じゃ無理もないですなぁ。自分だって、あなたぐらいの時にはまだ一桁しか殺しちゃいませんでしたよ」
 まったく、末恐しいことで、と首をすくめてみせた斎木に、恭子は苦笑を浮かべてみせた。
「あら、私だって全部自力は一桁よ。大して変らないんじゃない?」
「そうですかね? 初体験もずいぶんと早そうですが?」
 斎木の言葉に、恭子が苦笑とともに答えかけ、ふっと表情を強張らせた。斎木の横に、いつのまにか一人の女性が佇んでいる。 女性と言っても、自分とたいして年齢は変らないだろうが。
「兄さん。人が来るわ」
「おっと。こんな物騒な話、人に聞かれてするもんじゃありませんなぁ。
 では、自分たちはこれで。いずれお手合わせ願いたいものですな、お嬢さんたちとは」
「そうね。縁はあるみたいだし、そのうち、ね。
 ・・・さて、何だかやる気はそがれちゃったわけだけど、どうする?」
 中井と広瀬の二人に視線を向けて本当にどうでもよさそうな口調で恭子が問いかける。
「なっ・・・何言ってんのよ!? 喧嘩売ってきたのはそっちの方でしょ!?」
「ナーム! やめて」
 激昂しかけた広瀬を制し、中井が正面から恭子の瞳を睨みつける。
「先輩。だって・・・」
「こんな所で喧嘩したら、私たちだけじゃない、他のみんなにも迷惑がかかるわ。出場停止にでもなってみなさいよ。 まだ試合してない男子部員たち全員が失格になっちゃうのよ?」
「それは・・・でも・・・!」
「賢明な判断ね。リベンジがしたいなら、そこの彼女に聞けば私の家は分るわ。いつでも受けてあげるから、その気が あるなら訪ねていらっしゃいな。まぁ、建前で隠した本音を考えれば、来れないでしょうけど」
 余裕の笑みを浮べている恭子に、一瞬悔しそうな表情を中井が浮かべる。ぱんぱんっと胴着の埃を払うと、彼女は くるりと恭子に背を向けた。
「行きましょ、ナームちゃん。みんなが待ってるわ」
「あ、ちょっと・・・もうっ」
 さっさと歩きだした中井の背と恭子を交互に見て、広瀬が不満だらけの表情を浮かべた。だが、流石に先輩の言葉を 無視するわけにもいかないのか、シブシブといった感じで中井の後を追う。苦笑を浮かべると、恭子は朱音に視線を 向けた。
「久し振り、というには日がたってないわね」
「・・・どういうつもりなんですか? いきなりあんなことをして・・・」
「言ったでしょう? メインイベントの前の暇潰し。の、つもりだったんだけど、ね・・・。
 斎木大祐か。ちょっとやる気がそがれちゃったなぁ」
 日を改めましょうか、とか呟きながら、恭子が髪をかきあげる。怪訝そうな表情を浮かべた朱音にむかい、恭子は 小さく笑った。
「心配しなくていいわ。今日はもう、これ以上何かするつもりはないから。本当は、冬馬にちょっかいかける予定だったんだけど。 ま、やめといてあげる」
「恭子さん! あなたは・・・一体、何をしたいんですか!?」
「別に、何か変なことをしたいわけじゃないけど? ただ自分が楽しいと思える方に動いているだけで、ね」
 そう言って、恭子が最初に出てきた廊下へと姿を消す。溜息をついた朱音の視線が、横の通路からやってくる冬馬の姿を捕えた。
「冬馬さん・・・?」
「遅いから様子を見に来たんだけど・・・。今、もしかして、恭子が一緒だった?」
「あ、はい。・・・追いかければ、まだ追いつけるかもしれないですよ?」
 うつむきながら、朱音がそう言う。一瞬、困ったような表情を冬馬が浮かべる。
「そんな表情してる君を置いて?」
「冬馬、さん?」
「いいよ。俺に気付いてそれでも行っちゃったなら、今は会いたくないってことなんだろうし。それより、瑠果や修司が待ちくたびれ てる。とっととジュースを買って戻ろうよ」
 冬馬の言葉に、ふっと泣き笑いのような表情を朱音が浮かべた。
「狡いですよ、冬馬さん。そんな事言われたら、私、馬鹿ですから、期待しちゃいますよ?」
「狡い、かな、やっぱり」
「でも嬉しいからいいです。それに、最初からそういう立場でもいいって言ってたじゃないですか、私。 今のはちょっとイジワルしてみたかっただけですから」
 ちょっと無理したような笑いを浮かべて、朱音がそう言い、自販機へと向かう。髪をぐしゃりと掻き回し、冬馬は溜息をついて 恭子が消えた廊下の方へと視線を向けた。

「さっきの女の人、怖い心をしてた・・・」
 ぼそっと斎木景子(さいきけいこ)がそう呟く。うん? と声を上げて大祐は妹の顔を覗き込んだ。
「水瀬恭子、か。確かに物騒な女の子でしたねぇ。ま、その分、楽しみも・・・」
「違う。後ろにいた人」
 吶々とした喋り方で景子が兄の言葉を遮った。怪訝そうな表情を浮かべて大祐が首を傾げる。
「後ろ、というと・・・高校生の?」
「ううん。白いワンピース着てた人。からっぽで、底が見えないの。自分がどこにもいないの」
「心に防御をしてたんじゃなくて?」
「それとも違う感じ。うん、サイキじゃないと思う。反発しなかったから。でも、怖いと思ったの。本当に」
 どう言えばいいのか困っているような表情で景子がそう言う。ふぅんとどこか気のない返事を大祐は返した。
「ま、いずれにせよ、会う機会はこれからもあるでしょうし。今後の楽しみが増えたと思えば、ね」
「うん・・・そう、かな。そう、だね」
 小さく、景子は頷いた。

 ルルルルルと軽快なメロディが響く。僅かに眉をひそめると榊貢(さかきみつぐ)は腰のホルダーから携帯を取り出した。
「はい。・・・え? 綾? どうして・・・会いたい? 今すぐに?」
 ぐしゃぐしゃと髪を掻き回しながら彼は目の前の建物を見上げた。今日、あそこで空手の県大会が行われている。そして、それを 見に『あの男』も来ているハズなのだ。
「うん。分った。これから行くよ。うん」
 通話を終え、溜息をつく。もう一度会場へと視線をやり、彼は心の中で呟いた。
(四須崎冬馬、か。人の女に手を出したこと、後悔させてやるからな、絶対に)
 本当は、今日、待ち構えて殴ってやるつもりだった。だが、どうしても会いたいと、大事な話がしたいから、と、そう 綾が言うなら、仕方がない。あいつを殴るのは、いつだって出来るのだから。
 自分へとそう言いきかせると、彼は横にとめてあったバイクへとまたがった。

「みんながアタシにチヤホヤするぅ、だけどアタシは、みんながキライ〜♪」
 歌いながら三笠綾はダーツを的へと投げた。トンっと軽い音を立てて的の中央に貼られた写真へとダーツが突き刺さる。
「アタシを呼び捨てにするアナタァ、だからアタシはいちばんキライ♪」
 トン。二本目のダーツが写真に刺さる。もう何度も同じことを繰り返しているのか、写真はだいぶボロボロになっている。
「男なんて、バカばっかなんだから・・・」
 そう呟いて、彼女は三本目のダーツを投げた。


作者後書き
 お待たせしました。第四話、キ・ラ・イ・好き、フィナーレを御届けします。
 何だかプレリュードに比べて長いとか、最後の方で新キャラ増えてるとか(笑)、いろいろあるかもしれませんが、 実は私が一番困っていたりします(苦笑)。
 でもまぁ、作品については本文を読んでもらうしかないわけで、それに関しては特に言いません。ここでは、一種、 裏話的なものをします。
 本文中に出てきた中井美樹やナーム・ディオニシモ・広瀬(ちなみに、長いので普段は広瀬ナームと略される)などの 大会に出ていたキャラクターたちは、中村嵐・作の超長編ラブコメ小説「あばんちゅうる」に出てくるキャラクターです。 彼女たちが本当はどういう人なのかは、中村嵐に聞いてください(笑)。一応、ナームはエヴァのア●カが元ネタのキャラ クターです。
 最後に三笠綾ちゃんが歌っている歌は、「キ・ラ・イ・好き」です。PC−FX用ソフト「続・初恋物語」の 歌で、残念ながらソングコレクションは廃盤(らしい)ので、聞いてみたい人はFXを買いましょう(笑)。ちなみに、 歌っているのはミヤムーです。
 中井戦で恭子がやろうとした震脚というのは、中国武術の技法の一つで、踏み込む時にダンッと足を踏み鳴らすという ものです。本来は打撃に最も踏み込みの勢いを乗せるため、踏み込みの瞬間を分り易くするという補助の技ですが、 達人なら小石を踏み砕いて砂にすることも可能だそうで、充分に転んでいる相手への追い打ちになります。というか、 それで頭蓋骨踏み抜くぐらいは出来るので。
 では、ネタばらしはこの辺で。すぐに再会できることを祈りつつ・・・。 
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原作:水無月時雨
文章:夢☆幻
協力:中村嵐