6・とりあえず中国は四千年

<目次> <用語解説> <配役紹介> <前の回> <次の回>

 倫子が部室にいると池田が入ってきた。時は既に二月、私立の受験は始まっているはずなのだが何をしに来たのやら。聞くだけ無駄なので黙っている。池田はソファーに腰掛けると隣になったえみりが端に腰を動かす。西村がにこにこ顔で話し掛ける。
「部長様、お元気ですかぁ?」
「ああ、佐々木の入団会見に出席した山内薄ぐらい元気だよ」
「えへへ、それはよかったですぅ!」
 相変わらずこの二人の会話は意味不明だ。池田は週ベをまくりながらつぶやいた。
「そういや、来月はとうとうアレが発売だな…」
「プレイステーション2ですか?」
 しばらくの沈黙。池田が週ベの角で倫子の頭を小突く。
「アホかお前は? 星のカービィ64に決まっているだろう!? 胸にばっか集中してないで少しは頭の中も詰めたらどうなんだ?」
「そんなの関係ないじゃないですか? というか大学に入る直前の人が星のカービィ買ってる場合なんですか?」
「アホ抜かせ。俺は昨年ピカチュウげんきでちゅうを買っている」
「…それは、エロゲー買ってくれた方が正常な気がする…」
「カービィかわいいですぅ。ウフフ…まんまるですぅ、ピンクですぅ…」
 西村は悦に入っている。池田はぐるりと辺りを見回した。
「紫緒はいないのか?」
「今日はさっさと帰っちゃいましたよ」
「そうか…じゃあ、倫子でもつれていくか…」
「…どこにです?」

 高校の近くのデニーズに二人は入る。四人掛けの禁煙席に向かい合ってすわる。池田はノートパソコンを取り出して作業を始めた。倫子はアンジェパルフェを食べながら、ただぼうっと池田を見ている。彼の視線はモニターに落ちたままで、自分に振られることはない。
 たまに、池田と紫緒がいなくなることがあった。大体1.2時間経つと帰ってくるのだが、こんなことをしていたのだろう。正直言って少し退屈だ。それを強要する池田は悪い男だが、それに文句を言わない紫緒先輩もよくわからない。紫緒先輩がいなければ特に気が咎める風もなく私を連れ出している。姉は池田はやめておけと言った。人遣いが乱暴なのは初対面の時から知っている。女の扱いも乱暴なのだろう。でも、妙に惹かれてしまう自分がいる。雄雄しいと言うのはあるだろう。乱暴というのをよくいえば引っ張ってくれる。ちょっとパソコン部にどっぷりはまりすぎたかなあというのが、正直ある。
「…うん?」
 何気に見た窓の外。道路の向こうから歩いてくる女性を見て倫子はぽかんとしてしまった。山学の制服を着ているのでうちの学校の生徒には違いないが、倫子は開いた口が塞がらない。
「…か、髪の色がオレンジって?」
 そのまま見つめていると女性と目が合った。ぎろっと睨め付けられるので思わず顔を伏せる。
「な、なんかえらいもんを見てしまったような…」
 恐る恐る様子をうかがうように顔を上げる。その女性はちょうど自分のテーブルの横の位置で立ち止まってこちらを覗いている。険しい顔では無い。なにかを見つけたような表情になって、くるりと振りかえる。腰まで伸びた髪を揺らしながら店の中に入ってくる。
「え、ええっ!? ま、まさかイチャモンつけられるの?」
 女性は店員の応対を無視してこちらに歩いてくる。そして倫子の横に立った。心臓がバクバクして声が出ない。
「なにしてんのよ」
「は、はい?」
「早くこっちにどきなさいよ」
 そういって池田の横を指差している。わけがわからないのだが、倫子はおとなしくそれに従った。女性はそちらの席にすわると池田に向かって手を伸ばす。
「電話」
 池田は無言で白衣からケータイを出して手渡す。女性はピッピッと押すとケータイを耳元に当てる。
「ああ、雄弌? いまどこ?…デニーズいるから五分で来てね」
 そういうとケータイを切って池田に返す。ウェイトレスが来た。
「チーズケーキにアイスコーヒーで」
 そういうとコンパクトを取り出して顔をチェックし始める。池田がふうっと長い溜息をついた。
「おい、広瀬。なんで俺のケータイにお前の男のアドレスがメモリ登録されてるんだ?」
「話し掛けないでよ。こっちとそっちは別の席」
 そういって広瀬はテーブルの中央をすうっと指で線引きする。池田はノートパソコンを閉じるとゲームボーイを取り出した。
「ところで、あんた誰?」
「は、はい?」
 唐突に話し掛けられたので倫子はびくっとしてしまう。広瀬は機嫌悪く言った。
「どこの誰だか聞いてんのよ」
「あ、はい…一年I組の山内倫子です…」
「山内? ああ、あんたが律子の妹? ふ〜ん…そうなんだ。ま、姉よりはまともそうね」
 言いたいことだけ言うとまたコンパクトを見始める。倫子は池田の方を見たが彼も何も言わない。言ってくれないと自分も読者も訳がわからないのだが。
 広瀬がパチンとコンパクトを閉めた。そして驚くほどの笑顔になって手を激しく左右に振る。
「雄弌! こっちよ、こっち!」
 倫子が振り返ると、入り口に男子学生が立っていた。ぶすっとした顔のままでこちらに歩いてくる。
「先輩、こんちわ…」
「ああ」
 男性の方は池田に軽く会釈してから席に着く。広瀬は彼の腕を引いてぴったりと身を寄せる。
「雄弌、何がいいの? 池田の驕りだから遠慮しなくていいのよ?」
「そうなのか?」
「あんたはうるさい」
 池田の台詞をぴしゃりと切る。雄弌とかいう人が池田のことを先輩と言って、この二人の様子からすると広瀬も池田の後輩っぽいのだが、広瀬の方は池田の事を先輩扱いしていない。それで池田が怒らないのが不思議だ。
「…やっぱ美人だからか」
 倫子はぼうっと、目の前で二人がいちゃいちゃしているのを黙って見る他ない。
「ねえ、雄弌。次の日曜、どこ出かける?」
「どこったって…部活が終わった後だぜ? 千葉ぐらいしかいけないだろ…」
「あ〜あ、一日休みがあれば東京行けるのになあ。ねえ、また映画? 今度何見るの?」
「映画って言ったって…お金ないだろ?」
「池田、ある?」
 そこで唐突に池田に話し掛ける。池田は黙って財布を開くと何かを取り出した。映画のタダ券っぽい。
「ウフ、ダンケ! さてと、そろそろどっか行きましょ?」
「あ、ああ…あ、先輩、御馳走様です…」
 二人は嵐のように去っていた。倫子が池田に聞く。
「あ、あれ…誰なんです?」
「お前知らんの?」
「知らないですよ、あんな人!」
「お前、うちの学校のミューズやんか」
「ミューズ? ああ、うちの学校のミスコンのことですね…え、ええ!? うちの学校のミューズ!?」
 何度も書くが山城学園は全校3600人。しかも一芸入試には容姿端麗というのまである。ミューズは毎年美人揃いで、山城財閥のCMに起用されたりして芸能人になる者もいる。
「そ、そういえば二年生のミューズに外人の人がいたような…」
「広瀬ナームだよ、今のが」
「は、はあ…なんでそんな人と知り合いなんですか?」
「別に直接ってわけじゃないよ。和佳子や紫緒や律子と同じクラスだからな」
「ふぅん…姉さんたちの友達かあ」
「いや、友達ではないらしいが」
「…なんですか、それは?」
 倫子は眉をしかめる。池田はゲームボーイから目を離さずにボソリと言った。
「女の敵は女だってことだろ」
 
 デニーズを後にした二人はゲーセンに行く。
「いけっ、バスターウルフッ!」
「ああ、やられたっ!?」
 餓狼をプレイして池田に負ける。再トライしようとしたが小銭が切れた。席を立って両替機の方に向かう。
「あれ、佐藤先輩じゃないですか?」
「おお、倫子か。部室に行ったら池田と出掛けたと言うからな。寄り道してたのか?」
「ええ、まあ…」
「よ〜し、では早速対戦だぁ!」
「ええ、いいですよ。何ですか?」
「ふっふっふっ…これだぁ!」
「…は?」
 佐藤は席に座ってコインを入れる。倫子は固まっていた。
「どうした、早く向かいの対戦台にすわらんか」
「あの…これ…脱衣麻雀では…」
「なにをっ! 脱衣麻雀こそゲーセンの花形っ! 例え規制でパンツが脱げなくとも、アホな女どもを剥いてこその漢の魂であろうっ!」
「いや、別に先輩がやる分には構わないんですけど…私は御遠慮します…」
「馬鹿者っ! 既に賽は投げられているっ! 今更引けるかっ! ええい、お前のような分からず屋は体でわからすしかないっ!」
「そ、そんな私、麻雀なんてギャンブルはやりませんてばっ!」
「何を、中国は自国生まれのオリンピック競技がないからと世界に広まっている麻雀はスポーツだ!とか抜かしてオリンピック競技に組み込もうとしているんだぞ! オレと一緒に清々しい汗を流そうではないか? ガハハハハ!」 
「ちょ、ちょっと先輩!!」

 佐藤に引きづられてつれてこられたのは学校の特別棟校舎だった。ここの7階がパソコン部である。今は4階の奥、薄汚い扉の前にいた。
「こ、ここは…」
「麻雀部の部室だ」
「ま、麻雀部? 山学はそんなものまであるのね…」
「では行かん…」
「…うっ!?」
 扉を開けた瞬間、男の部屋の悪臭が漂ってきた。薄汚れたカーペット。食い散らかしやエロ本が散乱していた。
「…パ、パソコン部とえらい違いだわ…」
「よう、佐藤。昼間から珍しいな」
 奥から暗い顔の男性が出てきた。佐藤は雀卓にすわると全自動で配牌する。
「このケツの青い新入生に男の道を教え込んでやるのさ」
「いや、だから私女なんですけど…」
「そうか、なら俺もひとつ手を貸すとするか。俺は麻雀部部長の平岡誠二だ。よろしくな」
「は、はい…」
「しかし面子がたりんな。上岡でも呼ぶか。…男の登場シーンなど出してもしょうがないからもうそこにいることにしよう」
「…なんていい加減な…第三話なんかストーリーに関係ないのに池田和佳子先輩の登場シーンに中盤丸々使ったのに…」
「ではチーム戦で勝負開始だ!」

…半荘終了…

「なんだ、こっちのチームとそちらの差はもう五万点か」
「おいおい、佐藤。これじゃ勝負にならないぜ?」
「ていうか、ルールも教えてもらってないのに勝負になるわけないでしょう!」
「まったく、ピーピーうるさい奴だな。上岡、お前後ろについて教えてやれ」
「ほい、わかりました…」
 倫子の親で始まる。上岡が耳元でささやいた。
「ええと、ピンズが多いですね。ここはピンズのチンイツ狙いで行きましょう」
「なんですか、それ?」
「全部ピンズで作るんです。さらに全部ジュンツにすればピンフもつきますから」
「まあ、よくわかんないけど…」
 しばらくやると手が染まった。
「確か、こういう時ってリーチですよね?」
「うん、まだ中盤だからチャンスはあるよ」
「……流局ですね」
 すると佐藤が崩した手牌の中に自分の上がり牌があった。
「あれ…その牌、役に絡んでないんじゃ?」
「アホ、お前の当たり牌だから捨てたくても捨てられないんじゃないか」
「え?…な、なんで…」
「…お前、捨て牌にピンズが一枚もねえじゃねえか。そんな奴がリーチしたら怖くてピンズなんか捨てられるか!」
「手を一色に染めたがるのは素人の悪い癖だな」
「し、素人って…上岡先輩!?」
「いや、僕はもう、高校三年間みっちりやってるけどねえ…」
「…勝ったことあります?」
「いや、もう毎回毎回佐藤君に泣かされてるんですよ、ウフフフ…」
「…上岡先輩なんかに頼った私が馬鹿だったわ…」
 気を取り直して再開する。倫子はルールブック片手にともかく勝ちを狙う。なんだかんだいっても勝負事になると燃えてしまうのはゲーマーの性か。
「安目でもいいからともかくあがらなくては…ピンフにタンヤオで、後はドラに期待するしか…」
 倫子は牌を捨てる。すると上岡が奇声を上げた。
「わわわっ!? やった、上がった! それ当たりですっ! いやあ、上がったの久しぶりだなあ…」
「…上岡先輩?」
「うん? どうしたの?」
「チーム戦なのに仲間から直撃するんじゃない!」
「うごっ!?」
 倫子の一撃を食らって上岡は散る。肩で息をする倫子の後ろから、佐藤と平岡が不敵に笑う。
「さあ、倫子。もう後はないぞ?」
「お会計の準備は出来ているのかな、フフフ…」
「お、お金かけてるの? そんなの聞いてないわっ!」
「ふざけるなっ! 図書券で麻雀なぞ出来るかっ!?」
「銭が無いなら、男なら命(たま)、女なら身を使って払うしかねえなあ…」
「や、やられた…はめられたわ…」
「さて、チーム戦だが上岡がいなくなってしまったな。ハンディキャップでやるか、それとも降参するか…」
 倫子の額に冷たい汗が流れる。するとそこで扉が開いた。
「お兄ちゃん? こんなところで何してるの?」
「ゲゲッ!? えみり? な、何故ここに!?」
「部長が、お兄ちゃんが倫子を連れ出していなくなったって言うからみんなで探しているのよ? ほら、倫子。帰りましょう」
「た、助かった…」
「ちょっと待った」
 平岡が声をかけ、二人は振り返る。彼の鋭い視線が光った。
「これは麻雀部とパソコン部の対抗戦だ。口出しはやめてもらおう」
「対抗戦? なにそれ?」
「…それじゃしょうがないわね」
「え、ええっ!?」
 あっさり引き下がるえみりに倫子は仰天する。
「ちょ、ちょっとえみり?」
「対抗戦なんて馬鹿馬鹿しいけど、生徒会の規則で決まってるからしょうがないものね」
「…なんか、安物の少年漫画みたいな設定はやめて…た、助けてよ、お願いだから」
「何か困ってるの?」
「そ、それが詐欺にあって…」
「チーム戦なんだが上岡がくたばってしまって続行できないんだよ」
「ふーん、そうなんだ。じゃ、私が入ればいいのね?」
「ええっ!? そうなの?」
 仰天する倫子を横目に席についたえみりは牌を手に取ると小首を傾げる。
「なんか抽象的な絵だけど、ポンジャラと一緒でいいのよね?」
「…もう、勝手にして…」
「さて、親は俺の番だな。ああ、言っとくが負けは全部倫子が背負うんだからな、妹は一切ノータッチだからな?」
「なにそれ? なんでえみりだけそうなるのよ?」
「うるさい、途中からヘルプで入ったんだ。それだけでも有難く思え」
「くく、このインチキ野郎が…」
「あ、お兄ちゃん、それあがり」
「へ?」
 まだ始まったばかりだが、えみりが手を上げた。隣の平岡が手配を覗き込む。
「ほんとに揃ったの? 間違っていると八千点…何っ!?」
 平本が絶句する。ぎこちなく牌を倒していくえみりを倫子が手伝う。
「…あら、方角ばっかだわ」
「つ、字一色だと!? そんな馬鹿な…」
 佐藤も絶句する。平岡がうわ言の様につぶやいた。
「いきなり字一色とは…ま、まさか彼女は…伝説の素人美少女なのか?」
「な、何を馬鹿な…脱衣麻雀で、必ず五手以内に役満を上がり、さらに三回に一回は天和を出すと言う、あの素人美少女だと言うのか…あれはもう、とっくに絶滅したはずだ…」
「…なにをわけのわからないことを言っているんですか…」
「そうだ、そんなわけはない。佐藤、我々には最後の切り札がある」
「まさか素人二人にこの手を使うことになるとはな…」
 佐藤と平岡の目が光る。そして牌を突然かき混ぜ始めると、あっという間にセッティングする。
「…な、なんで全自動卓なのに手でやるわけ? ま、まさかイカサマ?」
 倫子の疑念を無視して佐藤たちは牌を取っていく。手牌が決まって倫子は絶句する。
「こ、これは国士無双テンパイ!? あ、あきらかに罠だわ…」
「フフフ…倫子、これで終わりだな。次のお前のツモは平岡の当たり牌。そしてもし手牌の中から何かを捨てれば…」
 心の中で勝ち誇る佐藤は自分の手牌を見てニタリとほくそえんだ。
「手牌を捨てた時は倫子、どれを捨てようとこのオレ様の国士無双十三面待ちテンパイに振り込むのだ! つまりどちらにしろ貴様から直撃、これでお前は終わりだ!」
「さとて、僕も今回は運がいいなあ。さっそくリーチだよ」
 平本が白々しく牌を捨てる。しかし、えみりがツモを取らない。
「ん? どうした、えみり?」
「同じ牌3つになる時って、取って外に並べてもいいんだったっけ?」
「ああ、ポンだな…いいんじゃないの?」
「じゃあ、ポンね」
 倫子がポンを作る。そしてツモを取った。そして再び小首をかしげる。
「あら? 揃ったみたい…」
「おいおい、一度鳴いた場合は役が無いと上がれないぞ?」
「ちょっと失礼して…あら、これってさっき上岡先輩が言っていたチンイツじゃないの?」
「じゃあ勝ちでいいのね」
「く…連荘か…まあ、チンイツだけならたいしたことはあるまい…」
「いや、待て。ポ、ポンの3枚が全部ドラだ…」
 そう言いながら平岡が裏ドラをめくろうと手を伸ばす。佐藤は平岡の手に握られた牌を見て絶句した。
「な、何? 頭が裏ドラでドラが計5つだと!?」
「や、やばい…点差があと役満一回で追いつかれる…」
 平岡は呆然としている、その隙に倫子は牌を機械の穴に入れてしまう。
「よし、これでイカサマは封じたわ…」
 4者沈黙のまま黙々と手牌を作る。平岡が佐藤に耳打ちした。
「おい、佐藤。どうするんだ? このままではミイラ取りになってしまうぞ…」
「慌てるな、相手は素人なんだから落ちついてやれば負けはしない…」
「えっと、最初は誰なの?」
「ああ、えみり。お前だよ」
 そこまで言って佐藤はふと悪寒が走る。
「えみりが親? そして三回目…まさか!?」
「あれ、揃っちゃったわ」
「……」
「……」
「…天和ね」

「ああ、危うく酷い目にあうところだったわ…」
 倫子はパソコン部のソファーでだれていた。池田はゲームボーイをやっている。
「部長も佐藤先輩に何か言ってくださいよ…最近見かけないけど」
「うむ…しかしあれだな…」
「はい?」
「その話からすると、お前は美少女じゃなかったんだな」
 律子がくすっと笑った。倫子は頬を膨らませる。そこにえみりが入ってきた。
「ねえ、部長。本当にお兄ちゃん知らないんですか?」
「知らないって。女ならいざ知らず、男を家に泊めたりせん」
「……それにしても、本当にどこに行っちゃたのかしら?」

 船が太平洋の白波を切り裂いていく。佐藤が海に向かって叫んだ。
「脱衣麻雀なんてインチキだ〜〜〜!」
 そしてマグロ漁船は大海原を行く。


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2000.11.15